紹介センターと「見学同行」(前編)
「決定率の高さ」とは何か
私たち紹介センター相談員向けの事前内覧会や懇親会の会場などでここ数年、有料老人ホームの事業者さんからよく聞くようになった言葉に「決定率」というのがあります。「決定率が高い」ホームは、優秀な入居相談員がいる、パンフレットなどで見るより実際の見栄えが良く好印象を持たれやすいといった特徴があるようです。
言葉の意味は読んで字のとおり「見学に来られた方のうち入居を決められた方の割合」を指すと分かるのですが、「ウチのホームは決定率が高い」という統計上の情報をなぜ私たち紹介センターの相談員に伝えるのか、意図が最初は分かりませんでした。
ご本人やご家族からのご相談を承り、見学にも同行しながら適切な助言をお伝えし、ご入居までのお手伝いをする私たちの業務に、ホームの「決定率」がどう関わるのかが結びつかなかったのです。
見学同行を行わない紹介センター
少し考えてその言葉の意味は分かりました。ホーム見学に同行しない紹介センターにとっては、「ホームの決定率が高い」という情報はとても有益なのです。
「相談者との見学に同行しない紹介センター」というのは、私たちにとっては「身の回りのお世話を行わない有料老人ホーム」と同じくらい矛盾して聞こえるのですが、結構あるんですね。
見学同行を行わないメリット
紹介センターが見学同行を行わない「メリット」があるとすればどういうものがあるでしょうか。
まず思いつくのは人件費や交通費がかからない点でしょう。紹介センターが有料老人ホーム事業者との間で交わしている契約内容は、あくまでも「入居者を紹介し成約したときに手数料が発生する」ことを定めたもので、見学への同行は条件ではありません。見学に同行してもしなくても手数料が変わらないのであれば、同行せずに済ませた方が経費が掛からない分、オトクということです。
ダブル・トリプルブッキングも「可能」に
またもうひとつ、こちらの方が大きな要素だと思いますが、複数のご見学案件を同時に扱える点が挙げられます。
入居についてのご相談は、ご本人からいただくよりも息子様・娘様などご家族からいただくことが、私たちウィルホームコンサルプラザでは圧倒的に多いのですが、要介護の方の入居相談の場合は他所でもおそらくそうではないかと思います。
つまり息子様・娘様世代はまだお勤めをされているなどで平日に時間が取りづらく、見学の日取りが週末に集中するのです。ひとりの相談員は一件の見学にしか同行できませんが、電話やメールなどでホームと相談者の間に入って連絡を取り、業務は見学の「手配」までとして同行しなければ、同じ日の同じ時間に違うホームの違う見学案件を「こなす」ことができます。
見学に同行しないのですから、見学案件は現地で対応する有料老人ホームの相談員に「託す」ことになります。ここで冒頭の「決定率」が活きてくることは言うまでもないでしょう。自分で行かないのですから、「決めてくれる可能性の高い」(=決定率の高い)ホームは、その紹介センターの提案先ホームに入りやすくなるのです。
今回の前編はここまでとし、次回後編では、それでも私たちが見学同行を徹底する理由をお伝えしたいと思います。
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