見学後の入居先選定について
有料老人ホームなどの高齢者ホームを選ぶとき、「複数のホームを見学して決めましょう」というのはよく言われるポイントです。私たちウィルホームコンサルプラザでも、ひとつだけ見て決めるのは極力避けましょうとご提案しています。
優先順位の整理がポイント
しかし費用や立地、入居後に受けられるサービスや、リハビリスタッフの常勤・看護職員の夜間帯常駐といった職員体制などの条件を踏まえて選んだ見学先の中から、最終的にひとつの入居先に絞るのは、なかなか大変です。
私たちも3~4か所のホームをご案内することが多いのですが、そもそも上記に挙げたような基本的なご希望条件は事前にヒアリングしたうえで見学先ホームをご提案しますので、ひと通りの見学が終わった後に「さてどこが良いだろう」と悩まれるご相談者は少なくありません。
ここでポイントになるのが見学を通じて「優先順位を整理する」という過程です。優先順位があやふやなまま見学を重ねると、いくつホームを見ても決めることができず、見学したホームの数だけ混乱してしまうことになりがちです。以下、具体的に見ていきたいと思います。
費用について
比較する二つのホームの月額料金に20,000円の差があった場合、5年間で120万円の差になります。年金の受給額や預貯金等とも相談しながら余裕ある資金計画を立てたいものです。
入居後の費用についてもあらためて確認しましょう。月額利用料と、月額利用料に含まれない費用の総額はご予算に対して余裕を持ったものになっているでしょうか。
なお要介護度の重度化による費用増については、介護付有料老人ホームの場合は定額で分かりやすい※のですが、住宅型有料老人ホームの場合は、要介護度別の限度額を超えると自費分が発生する可能性があります。住宅型有料老人ホームの場合は、要介護度別に限度額に対して何割程度介護サービスを利用しているか、また自費が発生している方の人数や状況なども聞いておくと良いです。
※自己負担割合が1割の方で、要介護度1以降は要介護度がひとつ重くなるごとにおおよそ2,000円程度負担額が増えるイメージです。多くの介護付有料老人ホームでは料金表に要介護度別の介護費用負担額も明記されています。
細かい点で言えば、欠食時の返金の取り扱いや入院などで施設に不在の時にもかかる費用、料金表の表示が税込か税抜かなども確認しておくと良いと思います。
立地について
入居後もご家族が面会に行きやすく、また緊急時に駆け付ける際にも便の良い立地を希望される方は多いのですが、ご予算その他の関係で希望が叶わないケースも少なくありません。前述した「費用」はオーバーするわけにいきませんし、後述する「ホームの信頼性」は譲るわけにはいかない項目です。よって「立地」の優先順位は「サービス内容」との兼ね合いの中ではありますが、相対的に低くなることが多い項目だといえます。
自転車で通えるくらい近いところ→区内→最寄駅と同じ沿線…という風に、言葉は適切ではありませんが「妥協点」を探すこともしばしばあります。
サービス内容について
職員が提供する介護・看護・レクリエーション・リハビリに加え、協力医療機関との連携による医療サービスがどのような内容でどのように受けられるものなのかを再度確認しましょう。
看護職員の夜間帯も含めた24時間の常駐体制や、理学療法士・作業療法士といったリハビリ専門職の常勤などを、希望条件としてどこまで重視するかという観点も必要になります。
個々のサービスの内容に加え、各職種間でどのような連携がなされているかが質にも影響してきます。リハビリも専門職が「週に○○回、1回あたり△△分」実施しているかより、そのリハビリ計画や内容、進捗状況を各職種間で共有し、日常の介護や看護にどのように生かされているかを知ることの方が大切なケースも多々あります。
また最近ご相談者の口からもきかれることの多くなった「看取り」も、介護・看護など現場スタッフ間の連携に加え、協力医療機関の医師、訪問の薬剤師などの多職種・他職種間の連携、さらには入居者・ご家族とも意思の疎通を図り共有していくことが不可欠です。看取りを希望される場合は「できるかどうか」だけを確認するのではなく、そのための体制をどのように取っているか確認すると良いでしょう。
ホームの信頼性について
入居後のことを考えれば当然、信頼性に足るホームかどうかという視点も必要です。
過去にあった例では見学時に、退院日の決まっているお急ぎの相談であることと退院の予定日を伝えたうえで、入居前審査の一環として行われる入居対象者への事前面談の日取りを「早めにとってほしい」とお伝えしていたにもかかわらず、一週間以上まったく連絡もなく放置されていたことがありました。当方からは再三、連絡を取っていたのですが繋がらなかったのです。
仮に一週間以上連絡が取れないほど忙しいのであればその旨を代理のだれかに託してでもどこかで伝えるべきです。誠意も真面目さもまったく感じられないその対応に、諸事情から条件に合ったホームが少なく、また退院期限の差し迫った状況ではありましたが、このホームへの入居検討は控えていただき、別の法人のホームへ最終的にご案内しました。
このケースは私たちにとってコンタクトを取るのが初めての運営会社でしたが、見学にも同行し、運営会社の代表に現地での対応をしていただいていたので、面談の結果、入居審査に通らない可能性はあってもそのずっと前段階でこのような対応を取られることまでは想定していませんでした。
このように約束を守れないところはやはり信用できません。送るといった書類が届かない、〇日までに電話すると言われていたのに連絡がない、担当者に伝えてほしいと伝言を依頼したのに伝わっていない…などは危険信号です。
以上、一例ではありますが、どうぞご参考になさってください!
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