紹介センターは「人身売買」事業者か問題
最近、テレビや新聞等で「老人ホーム紹介センター」(以下紹介センター)についてのニュースが報道されています。記事中には「人身売買」など過激な言葉も使われており、ご不安に思われた方もおられるかもしれません。
ただ記事の論調が「いかに紹介センターがあくどいことをしているのか」に終始しているのを読むと、少し複雑な気持ちにもなります。少し思うところについて書き記してみたいと思います。
資格不要で急増、「副業」としても注目
紹介センター事業を始めるには、特に資格は要りません。高齢者が増えれば老人ホーム入居の需要も増えるだろう、と紹介センターを立ち上げて相談員を名乗りさえすれば今日からあなたも私も相談員…ということになります。
実際には相談がなければ仕事になりませんから、病院や介護事業所を訪問したり、webサイトを作ってインターネット上から集客したりといった営業活動は必要となるのでそこはクリアしなくてはなりませんが、士業のような資格も必要なければ有料老人ホームのように届出が必要なわけでもありませんので参入しやすい業界といえます。
また不動産会社や葬儀会社など、独居高齢者やそのご家族と主業で接する機会の多い業界では「副業」的に紹介センターを開設するところも増えています。これも立ち上げの負担が少ないからという背景がありますね。
そんな玉石入り混じった紹介センターの中には、残念ながら低質なところがないわけではありません。これは事実ですし否定するつもりもありません。
三者の「お金」の関係
・高齢者施設を探している人(相談者)
・高齢者施設を紹介する人(紹介センター)
この二つの要素だけではビジネスになりません。
・「高齢者施設を探している人」が欲しい人(老人ホーム)
があって初めて三者が繋がってビジネスになっています。
報道されている「人身売買」にあえてなぞらえれば、情報を「換金」できる場所がないと紹介センター事業は成り立たない訳です。
さてその三者のお金の関係ですが…
①相談者×紹介センター間の関係
費用が発生しません。全国に紹介センターは数百社あるようですので相談を有料で承っているところもあるかもしれませんが、ほとんどの紹介センターは「相談無料」です。
相談者は希望条件を紹介センターに伝え、紹介センターはできるだけ条件に合うホームを提案します。
➁相談者×老人ホーム間の関係
見学の時点では「相談者」であり費用の発生はありませんが、入居契約を結んで「入居者」(またはその家族)となればホームの定めた費用を支払うことになります。
③老人ホーム×紹介センター間の関係
紹介センターは「成約ベース」で紹介手数料を受領しているので、何件見学にご案内しても、成約にならなければ一円にもなりません。成約した際は、事前に両者間で定めた紹介手数料を得ます。これが紹介センターの収入源です。
…と三者のお金の関係を見たときに、紹介センターは今回の報道でも問題として挙げられている「紹介手数料」に100%依存している構図が背景にあることがわかります。
事務所の家賃や光熱水費、相談員の人件費、移動の交通費や携帯電話代、インターネット環境整備のための通信費などの経費はすべて紹介手数料収入から賄うこととなります。あと税金もそうですね。
つまり少しでも多く「紹介手数料」が欲しいわけです。
紹介センターの立ち位置
もう一度前項の③に戻ってみます。老人ホームと紹介センターは両者で紹介手数料を事前に定めているわけですが、この関係はどのようなものなのでしょう。
老人ホーム事業者の立場で考えてみてください。
自分の老人ホームに入居者を紹介したいという事業者がいたとして「条件は手数料100万円」と紹介センターから言われたら「いいよ」と首を縦に振れますでしょうか。
「100万円くれることが紹介の条件だ」と言われたら「ならその話はナシでよいです」となりませんか。それが普通です。
もし「いいよ」回答があるとすれば、
・100万円払ってでも入居者が欲しい喫緊の事情がある
・100万円払っても十分お釣りがくるくらい自分にも利益がある
・その紹介センターからの紹介が途絶えると入居率維持が困難
…といったときに限られるでしょう。
つまり老人ホームは紹介センターとの提携や成約時の紹介手数料を自身の意向で決められる立場にあるわけです。
いくら紹介センターから高額の紹介手数料を要求されても、それが見合わないものであればそもそも提携(業務委託契約)をしなければよいだけです。
入居者の2~3割以上をある紹介センターに依存しているといったケースでは話は別かもしれませんが、情報を「換金」しないとビジネスにならない紹介センターとしては、「ではあなたのところとは条件が合わないので提携しません」と言われてしまえばその運営会社のホームは紹介できないことになってしまいます。
結果、言葉を選ばずに言えば紹介手数料額や支払期日等の条件は老人ホーム側の「言いなり」というのが実際のところなのです。
28億円不正受給事件の背景は
今回、紹介センターが大きく注目されることになった「ホスピス型」有料老人ホーム大手事業者の28億円もの診療報酬不正受給事件のケースは、「100万円払ってもじゅうぶんお釣りがくるくらい自分にも利益がある」がその背景にあります。
介護保険と医療保険の両方から収入が得られ、しかも「複数回、複数人」で訪問看護に入った「ことにして」不正に報酬を得ていたことが発覚したものです。利用する入居者側は負担額の上限があるため過剰なケアに気づきづらいという意味でも制度の暗部を突いたタチの悪い不正行為ですね。
この「社会保障費の不正な費消」も今回の大きな問題点になっています。その通りだと思いますが、「不適切な紹介手数料が設定されることの無いよう、紹介事業者の行動指針見直しを求めて」という記事を読むと、それは紹介センターだけを悪者にするべくあまりにも一方的な報道ではないかと思うのです。
前述のとおり私たち紹介センターは紹介手数料の決定権を持っていないからです。
紹介センターのこれから
紹介センターは、老人ホームをはじめとする高齢者施設需要増に応じてその存在感や影響力も大きくなっており、さまざまな整備が必要な時期に来ていると思います。
相談員の資格整備もその大きな課題ですし、事業者団体としても現在のように高齢者施設運営会社の団体(高齢者住まい事業者団体連合会=高住連)が主導して作られた届出制度にぶらさがるカタチで存在しているのも「不適切」だと思います。
紹介センター事業者自身が団体を作り、入会要件や公表する内容も自らで定め、業界全体の向上を目指すものでなくてはならないのではないでしょうか。
最後に、紹介センター業界に対しての私見を述べたブログ記事
「有料老人ホーム紹介センターは利益のみを追求するべきか問題」をご紹介します。
2021年4月の記事ですが、記事最後の項で今項と同じ「紹介センターのこれから」と題してほぼ同じことをお伝えしています。
5年前から考え方は変わっていないということですね。