有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の違いとは?― まずはここだけ押さえたい3つのポイント―
外から見ただけでは区別が付きづらい有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)。介護保険の専門家であるケアマネジャーさんでも違いが良く分からないという方がおられます。費用や入居後のサービス、職員体制などそれぞれの違いを解説します。お元気な方しか入れない有料老人ホームや、重介護の方の受け入れが可能なサ高住もあるんですよ。
入居一時金(有料老人ホーム)と敷金(サ高住)の違い
有料老人ホームの多くで採用されている入居一時金方式は「家賃の前払い」、サ高住の大半が入居時に徴収する敷金は債務不履行時に充当する「預り金」です。
仮に家賃相当額が15万円で、5万円分は毎月の支払、残りの10万円は60か月分前払いという有料老人ホームなら10万円×60か月の600万円が入居一時金ということになります。60か月分前払いしているわけですから、30か月経過した時点で退去すれば300万円は返還されることになりますし、60か月経てば0円になってしまいます。ただ入居した時点で何年入居することになるかはわかりませんよね。ですので入居一時金方式を採用している有料老人ホームでは、入居時に預かった入居一時金の一部を一律で 先取り(初期償却)することで、償却期間を超えて入居する方の追加金を不要と する仕組みが一般的となっています。
対して敷金は債務不履行時(つまり月額費用の支払いに滞りがあった場合)に充 当する預り金です。ですから入居期間中にそういった不履行がなければ退去時には原則全額返還されるお金です。(原則、としたのは退去時の経年劣化を除く原状回復費をこの敷金からまかなう ことがあるからです) 同じ「入居時に一括して払うお金」ではありますが、このようにその性格は大きく異なるので注意が必要です。
契約形態の違い
有料老人ホームでは入居契約を「利用権方式」で締結することが多いのに対し、サ高住は賃貸借契約で契約を結ぶところがほとんどです。
ひと言で言えばサ高住の賃貸借方式の方は借地借家法に基づいており、借りる側(入居者側)の権利をより強く認めたものとなっています。対して有料老人ホームの多くで採用されている「利用権方式」とは居室と共用部を「利用する権利」について定めた契約です。
入居時と身体状況が変わり、施設側にとってより職員の手厚いフロアに移っていただいた方がお世話がしやすいという事態になった時に、サ高住では元の契約を解約し、新たに移る居室での賃貸借契約を締結し直さないと「移せない」のに対し、有料老人ホームではご家族・ご本人の同意のもと協力医療機関の医師による意見書なども考慮してという条件はあるものの、契約書は変更することなく「移すことができ」ます。
また入居後に病院へ入院となり期間が長期にわたった場合、有料老人ホームでは退去の相談をされることがあります。
有料老人ホーム側の大きな収入源である介護保険料が入院期間中は入って来なくなるからですが、サ高住では家賃や管理費などの費用を支払うことで入院が長期になっても「借り続ける権利」は失われません。
開設するために必要な手続きの違い
有料老人ホームは、開設を予定している市区町村長による意見書、都道府県との事前協議を経て設置届を提出、都道府県知事による届出の受理をもって開設となります。
この過程の中で設計図面や30年の長期にわたる事業計画、市場調査書や直近の決算書類など膨大な添付資料の提出が必要となります。
介護付有料老人ホームの場合は加えて介護保険事業者としての指定を受けるために採用した職員の資格証の写しや勤務シフト表など、作成、提出しなければならない書類はさらに増えることになります。
つまり「こういうホームをやりたいのだがやっても良いですか」とお伺いを立て、最終的には都道府県知事からOKを貰わないとやれないのが有料老人ホームです。また届出を受理するわけですから受理した側もチェック、指導する責任が生じるわけです。
一方、サ高住は「登録」です。居室面積や館内のバリアフリーなど登録に必要な条件(主に建物設備に関するもの)を満たしたうえで事業者が登録すればサ高住として運営できます。
一定の条件を満たせば補助金が下りる制度がありますのでその意味での審査はありますが有料老人ホームの設置届受理までの流れに比べればその登録はずっと簡素であるといえます。
まとめ
サ高住にも外部サービスを利用して介護や食事の提供が受けられるものも増えていますので、サービス内容だけでみれば住宅型有料老人ホームと大きな違いがないということもあります。
このページでは個々の事業者によって異なるサービスや費用ではない部分での違いに焦点を当ててみました。要約すると以下の3点ということになります。
・入居時にかかる費用の「性格」の違い
・入居契約の「形態」の違い
・事業者が開設に要する「手間」の違い
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