昼食どきに有料老人ホームを見学する意味
先週は見学同行が6件ありましたが、うち4件は昼食試食付でした。
ウィルホームコンサルプラザでは、ご相談者様との初回面談のときに「特段のお急ぎ事情がなければ、ホーム見学は1日1か所ずつ、昼どきの見学を選んで昼食も試食しましょう」とおすすめするようにしています。
ご相談者様の中には、ホームの食事を「むかし入院したときに出された(あまりおいしくない)病院食」のイメージをお持ちの方が結構いらっしゃるのですが、実際ホームで「まずくてとても食べられない」ような食事がでることはマレです。(思っていた味気ないメニューと違って)「普通においしいですね」と感想を漏らすご家族が多いです。それでも食事は入居したら毎日3食の付き合いとなります。味付けはもちろん、季節感や郷土料理メニューなど献立のバリエーションも含めて確認すると良いでしょう。
昼食の時間に合わせて見学する意味とは
(1)食堂に集まった入居者を「見学」できる
昼食の時は入居者が食堂に集まります。おおよその男女比や「ウチのお父さんお母様と同じくらいの年齢/身体状況の方がどれくらいいるか」などがわかります。
食事に介助が必要な方がどれくらいいるのか、その入居者に対して職員がどのような食事介助をされているのか、なども「見学」できます。入居者の皆さんの表情や食堂の雰囲気などもよくわかります。
車いすの取り扱いもわかりますね。居室から食堂への移動には車いすを使うけれど、食堂の椅子に移れる方はできるだけ移っていただく…というホームだと、食堂の入り口に駐輪場のように車いすが並びますが、それをしていないホームでは車いすに乗ったままお食事を召し上がっています。
車いすから食堂の椅子への移乗には手間がかかりますし、移乗の際の事故リスクも高まります。
車いすからの移乗ができるホームは、それだけの「手間」をかけられるくらい人員に余裕があるとみることもできるわけです。
(2)味の確認
見学時に昼食を試食したら、ぜひ「献立」ももらっておくと良いでしょう。その日のメニューだけでなく月単位(または2週間単位)の献立はどこのホームにもあります。また食事はトレイごと写真に撮っておくと良いと思います。味付けや品数のほか、ホームによっては軽くて持ちやすい食器や、器が滑らないようにトレイに滑り止め加工をしているところもあります。全体が映るように撮っておくと、比較のときに便利です。
※紹介センター相談員に同行してもらうときは、この試食時間を「作戦会議」の場として活用しましょう。館内を案内してくれるホームの営業担当や施設長も、試食の時は席を外されることがほとんどです。館内を見学しての印象や、既に見学した別ホームとの比較など、ホームの方の目や耳を気にすることなく感想を伝え合うと良いでしょう。
私はこの時間を使って館内案内時の説明の補足をするようにしています。「先ほど相談員さんから説明にあった○○は、他のホームでも一般的に行われているものです」とか「▲▲まで費用に含むところは珍しいです」、「■■が料金に含まれているのは先日見学したホームと同じですね」など。
同業者の中にはこの試食の時間、一緒に試食せずに席を外し、別の相談案件をこなす時間にあてている方もいるようですが、信じられませんね。余談ですが。
(3)浴室まわりの見学がしやすい
皆さんは有料老人ホームの見学に行ったとしたらまずどこを見学されたいですか?ほとんどの方が「居室」と答えられると思いますが、実はホーム側も居室はお見せしたいのです。
多くのホームでは「モデルルーム」を用意していますが、洒落た家具や最新の家電品、観葉植物やステレオセットなど、いくらでも飾り付け、盛り付けができる場所だからです。
もちろん空室があれば居室はぜひご覧いただきたいのですが、見学に行ったらぜひ見ていただきたい場所がタイトルにある「浴室まわり」なんです。ご自宅で生活されている方であれば入浴は夕飯の前後や就寝前という方がほとんどだと思いますが、有料老人ホームの浴室は朝から夕方まで「フル稼働」していることも珍しくないのです。朝から夕方まで使っている浴室ですが、昼食の時間は皆さんご飯を食べているので見学がしやすいのです。
なぜ浴室まわりを見てほしいかというと、事故が起こりやすい場所だからです。裸になる場所ですから転倒ひとつとっても服を着ている時より大きなけがになりやすいですし、特に冬場は脱衣室と浴室の温度差から「ヒートショック」も起こりやすくなります。
加えて「朝から夕方まで毎日フル稼働」している場所ですから清潔の保持や整理整頓も大変です。居室がいくらでも「盛れる」場所なのに対して、浴室まわりは「カッコつけようがない場所=ホームの素の部分が見えやすい場所」でもあるのです。
転倒などの事故が起こらないようにどのような工夫や配慮をしているか、リネン棚や床は整理整頓ができているか、プライバシーの配慮はどのようにされているか…など見るべき点がとても多い場所なのです。他の共用室と違い、浴室は一人でも使っていれば見学することができません。 ぜひ見学時にはチェックしてみてください。
一日に複数ホームを見学すると…
入居を急ぐあまり一日に2か所、3か所と複数ホームの見学をしてしまうと…
(1)入居者と、介助する職員の様子が「見学」できない
(2)昼食の試食もできない
(3)午後のお風呂が始まってしまえば浴室も見学できない
…ということになります。一か所目が10時から、二か所目が12時から昼食試食付、三か所目が14時半から…と例えば一日に三か所のホームを見学したら、二か所目だけは見学で得られる情報がどうしても多くなります。そして三か所目の見学の時点では、かなり疲れていることでしょう。だいたいどこのホームでも同じようなことを聞かれ、同じような説明を受けるわけですから。ご本人もお連れしている場合はなおさらです。「本人が疲れたと言っていますので説明や館内案内は手短にお願いします」なんてことになれば、果たして適切な比較ができるでしょうか…。
ぜひ有料老人ホーム見学は、(1)一日一か所ずつ(2)昼食どきを選んで試食もさせてもらい(3)浴室まわりもしっかり確認してください。
これだけでも見学の質はグッと上がると思います。
関連記事
- 1日に何件も有料老人ホームを見学してはいけないこれだけの理由その1
- 1日に何件も有料老人ホームを見学してはいけないこれだけの理由その2
- 1日に何件も有料老人ホームを見学してはいけないこれだけの理由その3
- あそこはやめておいた方がいいよと言われたホームも見学するべきか問題
- 「他所も見て決めたほうが良い」という言葉の意味
- なぜ紹介センターはそのホームを紹介しなかったのか【業界としての問題点】
- 老人ホームの見学はプロに同行してもらうべきか問題
- 老人ホームを「再見学」する意味
- 紹介センターは「数字」で評価するべきか問題
- 老人ホームは何件見学すればよいのでしょう
- 高齢者ホームの「点と線」
- 見学のときは「入居後の生活についての質問」も忘れずに