有料老人ホームを見学する前に希望条件を整理しましょう(3)施設の類型
月々の費用を概算でつかむことで、入居時費用0円の方向で行くのか、前払金プランを選んで月々の費用を抑える選択肢を取るのかといった予算面のめどを付けたら、有料老人ホームの類型についても考えてみましょう。
有料老人ホームの3類型
有料老人ホームには介護付・住宅型・健康型の3つの類型があります。そのうち健康型は、入居時に身の回りのことがご自身でできるお元気な方が入居の対象で、入居後に介護が必要になった場合は退去しなくてはならいホームです。需要が少ないことから今はほとんどありません。どれくらいないかというと、私たちウィルホームコンサルプラザが対象としている東京・神奈川・千葉・埼玉の一都三県には一か所もありません。
ついては有料老人ホームの類型については介護付と住宅型の2種類があるというご理解でまずは良いかと思います。
介護付・住宅型それぞれのメリットデメリット
類型の定義的な違いは過去の投稿でもご紹介しています(有料老人ホーム選びの落とし穴(3)施設類型についての「落とし穴」)ので、詳しくはご参照いただくとして、本稿では「どう選ぶか」を焦点に考えてみたいと思います。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは介護保険の使い方が在宅と同じです。要介護別に設けられた限度額の範囲内で必要な介護サービスをケアプランに盛り込み、介護費用は使った分だけ自己負担分がかかります。
◎「アレもコレもまだ自分でできるのでサービスは不要」という方は限度額を余らせて介護費用を抑えることができます
◎歩行器や車いすなどの福祉用具は介護保険サービスを利用することで身体状況の変化によって適切なものに「借り換える」ことができます。
◎通いなれたデイサービスに入居後も引き続き通い続けられます。(デイサービスの送迎対応可能なホームに転居された場合)
×職員配置の基準がありません。介護職員、看護職員は極論でいえば一人も館内に居なくてもお咎めはありません
×ケアとケアの間の時間に「空白」ができます。在宅で訪問介護に来てくれるヘルパーさんが呼べばいつでも何度でも来てくれるわけではないのと同じです
×要介護度別に定められた限度額以上のサービスを利用すると、はみ出た分は自費扱いで10割負担となります。理屈上の介護費用は青天井ということになります。
介護付有料老人ホーム
◎介護費用は要介護度別に定額です。最も重い「要介護5」になったときの月額費用を考えておけば介護費用は青天井にはなりません。
◎介護職員は24時間常駐、看護師も日勤帯は365日常駐します。また入居者3人に対しこれら介護看護職員を1名以上配置する「3:1以上」の職員配置基準があります。
◎介護費用は定額ですので、必要なサービスは適宜回数を問わず提供されます。
×要介護度別に介護費用が定額なので、サービスを取捨選択してその分の費用負担を抑えることはできません。
×介護保険の枠は「有料老人ホームで24時間365日のサービスをひっくるめで受ける」ことで全額使ってしまいます。車いすや歩行器などは自費レンタルや購入となります。買ってしまうと、身体状況が変わるなどしたときは「買い替え」が必要になってしまいます。
×デイサービスも福祉用具レンタルと同じ理由で利用することができません。デイサービスで行われているレク・アクティビティなどは有料老人ホームが自前で提供しますが、今まで通っていた先に入居後も引き続き通うことはできません。
介護付と住宅型をどう選ぶか
住宅型有料老人ホームは、介護が必要な方が入れないという意味ではありません。介護付有料老人ホームとの違いは、一言でいえば「介護保険の使い方」ということになります。
よくレストランでの食事に例えられるのですが、好きなものを一つずつ頼んでその代金を支払うアラカルト方式が「住宅型」で、前菜からデザートまでがパッケージになっているコース料理が「介護付」のイメージに近いですね。
一品ずつでも料理をたくさん食べれば代金は青天井になる住宅型に対し、「デザートはいらないからその分安くしてください」ができないのが介護付ということになります。
メリットとデメリットをそれぞれどう評価するかは個々のケースによって異なりますが、ちなみにウィルホームコンサルプラザでは…
・職員の配置基準を設けていること(3:1以上)
・介護職員24時間看護職員も日勤帯常駐
・要介護度別に介護費用が定額で入居後の費用計算がしやすい
…といった点を重視するケースが多いことから昨年のご紹介案件のうち約85%が介護付有料老人ホームでした。
余談ですが…
上記の住宅型有料老人ホームのメリットとして挙げた
・必要ないサービスを省くことで介護費用を抑えられる
・通いなれたデイサービスに引き続き通える
は見学のときに確認をされた方が良いです。住宅型有料老人ホームでは同建物内に自社の運営する訪問介護事業所やデイサービスを併設しているところも多いのですが、この自社事業所を利用することが「暗黙の了解」になっているホームもあります。
ルールでは「囲い込み」にあたる自社事業所利用の強要はできないことになっていますが、家賃や管理費などの「月額利用料」を極力低額に抑える分、介護保険サービスの自社利用を前提にしているところも結構ありますね。
また住宅型有料老人ホームでは職員の配置基準がありませんから、看護職員が日中も含めて不在のところや介護看護の職員数が、入居者数と照らして少なく配置されているホームもあります。夜間を含めた職種ごとの職員がどのように配置されているかは確認しておくと良いでしょう。