有料老人ホーム選びの落とし穴(4) 職員配置についての「落とし穴」
さてこのシリーズも4回目となりました。今回は職員配置についての落とし穴についてお話ししたいと思います。
「3:1」ってなんでしょう?
前回の記事でも触れましたが、有料老人ホーム自体が介護保険の事業者となって介護サービスを提供する「介護付有料老人ホーム」では、職員の配置基準が定められており、要介護1以上の入居者3人※に対し、介護・看護職員(直接処遇職員といいます)1名以上となっています。これを「3:1」といい、例えば入居者が60人なら直接処遇職員が20名以上必要ということになります。 ※要支援の入居者は0.3人として換算します。
でも実際に入居者60人の介護付有料老人ホームへ見学に行っても、館内には20名も職員はいません。これが今回の一つ目の「落とし穴」です。
「常勤換算」の意味とは
この「20名」は、どの時間帯でも常時20名以上の職員がいるという意味ではなく「常勤換算」によるものなのです。
常勤換算とは、常勤職員の月の所定労働時間を基準にした換算方法で、上記の例で言えば、全員が常勤職員であれば20名が勤務しているということです。この換算方法では、職員の中に所定労働時間の半分だけ勤務する非常勤職員が2名いた場合は、1名と換算することになります。
この常勤換算20名の職員が、日勤・夜勤・夜勤明け・休暇といったシフトを組んで勤務しているのが、「3:1」の職員体制なのです。人数の多い日勤帯でも、出勤しているのは7~8名といったところではないでしょうか。
職員配置基準に階数は考慮されていません
この入居者60人のホームが、各階30人づつ2階建のホームだった場合と、各階6人づつ10階建だった場合とで基準が変わらないという点が二つ目の「落とし穴」です。特に6階建以上の高層ホームの場合は次の項で説明する「手厚い職員体制」になっているかどうかを確認した方が良いでしょう。
手厚い職員体制
有料老人ホームによっては基準を上回る「2.5:1以上」(入居者5人に対し職員2名以上)や「2:1以上」(同2人に対し1名以上)の手厚い職員体制を届け出ているホームもあります。中には基準の倍となる「1.5:1以上」(同3人に対し2名以上)のところもあります。
職員の上下階移動が負担となる6階建以上の高層ホームや、構造上死角の多い造りになっているホームなどでは、この「手厚い職員体制」が取られているかどうかが一つの判断基準になると考えてよいでしょう。
住宅型有料老人ホームには職員配置基準はありません
住宅型有料老人ホームは、ホーム自体は介護保険の事業者ではなく、介護サービスは訪問介護など在宅系の介護事業所から受けることになっており、職員の配置基準がありません。これが3つ目の「落とし穴」です。
介護付有料老人ホームでは入居者数に応じて29人未満なら1名、30人以上で2名、以下入居者数が50人増えるごとに1名の看護職員を常勤換算で配置することとなっていますが、住宅型有料老人ホームの場合は、(数は少ないですが)看護職員が不在というホームもあります。
運営会社によっては、ホームのスタッフとして看護職員を配置したり、介護保険のサービスとホームの生活支援サービスを組み合わせるなど、一人ひとりの需要に合わせた住宅型有料老人ホームならではのきめ細やかなサービスを提供しているところもあるので一概にはいえませんが、住宅型有料老人ホームでは介護・看護サービスの提供の仕方と看護職員の配置状況についてしっかりと確認する必要があります。
まとめ
今回の記事での落とし穴は3つあります。
・職員体制「3:1」は入居者3人に対し常時1名の職員を配置しているわけではなく常勤換算での数字です。
・職員配置に階数(居室フロア数)は考慮されていません。特に6階建以上の高層ホームでは手厚い職員体制かどうかを確認しましょう。
・住宅型有料老人ホームには職員配置基準がありません。看護職員不在のホームもあります。
今回はこのあたりで。次回は「新規オープン施設の落とし穴」についてお伝えします。どうぞお楽しみに!
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