私たちが見学のときに確認していること(5)
本シリーズもちょうど折り返しの第5回となりました。今回の質問は…
協力医療機関との提携内容について教えて下さい
です。
有料老人ホームでは設置届の提出の際に、協力医療機関との間で交わした契約書の写しを添付することが必須となっています。つまり有料老人ホームとして開業しているところは、必ずどこかの医療機関と提携内容について定めた契約書を交わしているということになります。
医療機関とひと言でいっても病院や診療所のように原則として患者側が「通う」ものもあれば、訪問診療所のように医師が「来てくれる」ものもありますね。
有料老人ホームでも、たくさんの診療科目を持ち入院や検査などの設備も整った病院と、内科が中心で診療科目は多くありませんが、定期的にホームへ来てくれる訪問診療所の双方またはいずれかと提携しているところが多くなっています。
訪問診療所だけと提携している有料老人ホームでは、対応できる診療科目を確認すると良いでしょう。内科のほかに、整形外科や精神科など入居後も受診が必要な診療科目がある場合、提携の訪問診療所で診てもらうことが難しいとなると、近隣の病院や診療所へ通うことになりますが、その通院介助で問題が発生することがあります。
協力医療機関への「通院介助」は介護費に含まれる
文末に参考資料を載せていますので詳細はそちらに譲りますが、介護付有料老人ホームにおいて、協力医療機関への通院介助は介護保険サービスに含めることになっているのです。つまりホーム側は別途費用を徴収することができません。
このことから介護付有料老人ホームの中には、通院介助を必要とする病院や診療所とは契約を結ばず、ホームに先生が来てくれる「訪問診療所」とだけ提携しているところもあります。近隣にある病院でも、協力医療機関として契約していなければ、通院介助に要する費用は徴収できます。私の実感ではここ数年、そのようなホームが増えているように思います。
また病院・診療所と提携しているホームであっても確認が必要です。困ったことに「通院介助」をどう定義するかは曖昧で、施設職員による車両等での送迎と、同乗する介護・看護職員による付添を分けた上で、「付き添いは無料だけれど送迎は有料」とするところもあります。
協力医療機関に通院の必要な病院が含まれている有料老人ホームでは、その通院介助がどのようなカタチで提供されるのか、しっかり確認するようにしましょう。ホームによっては、「協力医療機関以外の病院でも、半径○○km以内であれば、月〇回までは無料で通院介助を行います」というところもあります。
ちなみに住宅型有料老人ホームの場合、協力医療機関を定める必要はあるものの、通院介助に関する決まりはありませんから、協力医療機関への通院介助は「やらない」(=ご家族がお連れください)ということもできます。より詳しく確認する必要があるのはいうまでもありません。
少し長くなりましたが今回はこのあたりで。次回第6回は「お看取りはしてもらえますか」です。どうぞお楽しみに!
(参考資料)老企52号について
介護付有料老人ホーム(介護保険上は「特定施設入居者生活介護」といいます)では、在宅での介護保険サービスの利用と異なり、食事や入浴などの介助を何回、何分受けたかによって介護費用が決まるのではなく、要介護度別に一律の料金設定となっています。つまり要介護度に応じて包括的な(ひっくるめた)サービス提供がなされているわけです。
その「ひっくるめたサービス提供」の中に、どのサービスまでが含まれるのかについて、厚生省(当時)老人保健局企画課長通知として各都道府県介護保険主管部(局)長あてに出されたのがいわゆる老企52号といわれる文書です。
この中に「ひっくるめたサービスには含まないので有料老人ホーム側は別途利用者に費用を請求して良いよ」として記されているのが以下の文章です。
「当該特定施設が定めた協力医療機関以外の通院又は入退院の際の介助に要する費用」
これはつまり、協力医療機関の通院又は入退院の際の介助に要する費用は「ひっくるめたサービスに含む」ということであり、介護付有料老人ホームが協力医療機関への通院介助で別途費用を請求することができないとする根拠となっています。