書籍紹介(3)
ウィルホームコンサルプラザの書棚からおすすめ本を紹介するシリーズも今回で3回目となりました。今回も小説や新書、取材ルポなど幅広いジャンルから取り上げてみました!
スクラップ・アンド・ビルド
羽田圭介さんの第153回芥川賞受賞作で、まさに21世紀の家族小説です。求職中の健斗の視点で描かれる在宅介護の現実と、いびつな人口分布による世代間格差問題。被介護者を「過剰な足し算の介護で動きを奪って、ぜんぶいっぺんに弱らせ」る、「要介護3を5にする介護」という文中の言葉にはハッとさせられました。
https://books.rakuten.co.jp/rb/15395518/
記憶が消えるとき
老いとアルツハイマー病の過去、現在、未来ーと副題のついた本書は、アルツハイマー病についての考察本です。ベテランサイエンスライターである著者らしく章ごとの切り口がとてもユニークで、また旺盛な好奇心からあちらこちらに話が飛ぶのも読んでいて面白く感じました。私にとっては少し高価な本でしたが、図書館で借りてざっと読むようなタイプの本ではないかと思えば、買ってよかったんだと思います。
https://books.rakuten.co.jp/rb/13468390/
呆けたカントに「理性」はあるか
「認知症であろうと非認知症であろうと、高齢者は胃ろう設置について八割が嫌だと答えたのでした。これは偶然の一致でしょうか。他の調査でも同様の選択分布が見られることから偶然とは考えにくい。認知能力の衰えていない高齢者も認知症高齢者も、同様に生物に具わる「理性」に基づいた直感的判断を行ったと考えると、この選択傾向の一致を説明できます…」臨床観察と近代哲学の両面から人間の判断の構造をひもといた興味深い本でした。またエッセイの形をとって平易な言葉で開設されていたこともあり、頭に入りやすかったです。
https://books.rakuten.co.jp/rb/13215785/
仲が良かったのは、難病のおかげ
進行性筋ジストロフィーを患い、2014年12月に亡くなられた株式会社ハンディーネットワーク インターナショナルの創業者、春山満さんの奥様、由子さんが彼との出会いから別れまでの40数年間を綴った本です。奥様にこうも愛され敬われ慕われたのは、満さんご自身の魅力によるところが大きかったのでしょう。また彼の大きさや強さは、寄り添い続けた由子さんがいらっしゃったからこそであることもよくわかりました。「お涙頂戴感涙必至の感動記録」…などでは決してありませんよ!
https://books.rakuten.co.jp/rb/13187324/
老いてさまよう
毎日新聞特別報道グループ編著の本書。認知症の人はいま…と副題にあるとおり、認知症高齢者の「さまよい」をテーマにしたルポです。一部、若干取材が結論ありきではという印象を持った箇所もありましたが、大変興味深く読みました。街全体で地域の高齢者を見守り支える、福岡県大牟田市の取り組みなどは他自治体でも参考にできるのではないかと思いました。
https://books.rakuten.co.jp/rb/13087961/
緊急事態宣言の発令により、自宅で過ごされることの多くなった方も多いのではないでしょうか。ぜひその時間を少しでも読書に充てていただければと思います。また次回もどうぞよろしくお願いいたします!