書籍紹介(2)
ウィルホームコンサルプラザの書棚からおすすめ本を紹介するシリーズの第二回です。今回も前回同様、いろいろなジャンルから選んでみました。
医療経済の嘘
一橋大の経済学部を卒業された後に宮崎医科大学(現:宮崎大学)医学部を出て医師となった森田洋之さんの著書です。現在は医療経済ジャーナリストとしてもご活躍されています。
サブタイトルの「病人は病院で作られる」はなかなか挑発的ですが、なにがどう「嘘」なのかは新書ということもあり意識的に易しく丁寧に説明されています。書店で表紙の「○○〇が多い県に住むと医療費が2倍になる!」のコピーに惹かれて手に取った…という方にもわかりやすいのではないかと思います。また後半には経済学者、宇沢弘文先生の「社会的共通資本」を、これからの医療政策をどう進めるべきか考えるためのヒントとして紹介されていますが、これも大変興味深かったです。
https://books.rakuten.co.jp/rb/15472497/
医師が実践する超・食事術~エビデンスのある食習慣のススメ~
東京の北区西が丘でつかさ内科クリニックを開業されている医師の稲島司先生の著書です。
お医者さんの書いた食事術モノというと、「アレは食べるな」や「コレ食べなさい」的な内容をイメージしてしまいますが、先生が最後に書かれているとおり、稲島先生の基本姿勢は「食べたいものを食べる」なんですね。印象に残ったのは個々の食品についての評価よりもむしろ「目安は腹六分目、腹八分目でも多いのです。腹六分目でじゅうぶんです」や「医学的に妥当とされている食事はごくあたりまえのもので、特に目新しいことはないかもしれません」といったところ。エビデンスを踏まえて食事と向き合うことで導き出された「真実」をぜひ読んで知ってください。
https://books.rakuten.co.jp/rb/15295080/
最期も笑顔で
在宅看取りの名医が伝える幸せな人生のしまい方…とサブタイトルが付いた本書は、滋賀県東部の山間部、高齢化率34%の永源寺地域で在宅医療に携わる花戸貴司先生の著書です。
“振り返ると障がい者、精神疾患、認知症、高齢者らが、「かわいそう」などと同情されつつも、経済成長にとっては「非効率」とされ、社会から排除されてきた歴史があったように思います。高齢化が進み、人口が減り始めた永源寺地域ですが、日本の10年先の姿を映していると思います。これからの社会に必要なことは排除ではなく、共生の理念だということです。”
終始優しい目線で綴られる花戸先生。永源寺地域の高齢者がなぜ「最期も笑顔で」いられるのかがとてもよくわかります。
https://books.rakuten.co.jp/rb/15257481/
18歳のビッグバン
高次脳機能障害を負った小林春彦さんが、自身の言葉で気持ちを丁寧につづった良著です。
“社会は「わかりやすい対象」にだけ注目するのではなく、障害認定されていなくても実質的な困難を感じている人にも、目を向けるべきではないだろうか。”という訴えは切実でリアルです。
“大げさにマジョリティやマイノリティなんて分けてみるけど、案外、マジョリティなんて、自分がマイノリティだと疑ったり気が付いていない人の集まりだったりもするんじゃないか。”なんてハッとしませんか。
https://books.rakuten.co.jp/rb/13473107/
精神病院のない社会をめざして バザーリア伝
イタリアでは1978年、世界初の精神科病院廃絶法が公布されましたが、その制定に尽力したバザーリアの伝記です。日本国内の精神科病院の現状やあり方と合わせて考えるととても興味深い内容です。また認知症当事者の方々への偏見の解消や、あるべき地域との関わりなどにも通じる哲学を感じました。ただ、最後の補遺は難解でしたね。
https://books.rakuten.co.jp/rb/14453836/
今かくあれども
ベルギー出身のアメリカの小説家・詩人のメイ・サートンによる小説で、1970年代のアメリカの老人ホームを舞台に描かれています。主人公カーロの独白で語られるホームでの生活は、尊厳や自由からもほど遠い屈辱にまみれたもの。カーロの心の動きがとてもリアルで胸が苦しくなりました。まさに今の日本でこそあらためて読まれるべき作品だと思いますが、現在入手困難です。中古品をあたるか、お近くの図書館で探してみると良いと思います。
本は毎日のように新刊が出ており、数年たつともう入手が難しくなるものもあります。「気になったら買い」ですね。書籍紹介は今後も続けていきたいと思います。