重要事項説明書の「読み方」講座(8) 利用料金(前編)
さて今回は、前回の投稿でお伝えしていたとおり「利用料金」の項目を見ていきます。長くなりそうなので前後編に分けます。
費用に関してはホーム側で用意しているパンフレットや料金表などでも詳しく紹介されていますが、重要事項説明書にはその根拠や内訳、返還の際のルールなども細かく記載されていますので、ぜひ合わせて確認してください。
入居時の費用について
有料老人ホームといえば、入居時に高額な一時金…というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。実際、ほんの10年くらい前までは数百万円~数千万円の「入居一時金」(前払金)を必要とするホームが大半でした。今は前払金不要のタイプも増えてきています。
前払金プランのあるホームでも、前払金不要(=月払)プランを併設していて、どちらか選ぶことができるところが多くなっています。
前払いプランの場合、その金額は「家賃相当額(またはその一部)×想定居住期間(月数)」+「想定居住期間を超えて契約が継続した場合に備えて事業者が受領する額」から成っています。
…というと、とても難しく聞こえますね。
わかりやすくするために前払金が750万円で月々の家賃が10万円、入居者の想定居住期間を5年と設定している、とあるホームを例に説明します。
月々の家賃が10万円で想定居住期間が5年(=60か月)、前払金が750万円ということは、「想定居住期間を超えて契約が継続した場合に備えて事業者が受領する額」は750万円-(10万円×60か月)=150万円ということになります。この金額は、入居時に一括で償却され、返還の対象にならない(※)ことから「初期償却」と呼ばれており、また前払金総額に対する割合を「初期償却率」といいます。この例でいうと20%になりますね。
※ただし入居から90日以内の退去の場合は、初期償却額も含めた前払金の全額を返還することとなっています。(滞在日数分の日割相当額を除く)
60か月分の前家賃だけなら600万円で済むところ、150万円余計に払うのは理不尽…のようにもみえますが、入居の時点で何年住むことになるかは誰にもわかりません。長生きする分、コストがかかり続けるということになると、年金以外の収入が期待しづらい高齢者にとっては大きなリスクになります。
この150万円は保険のようなもので、60か月分の前家賃と合わせて入居時に負担することで、6年目以降どれだけ長く契約が継続しても61か月目以降の10万円の負担が不要となります。
一方、60か月以前に退去した場合、150万円は一括で償却されて返還されませんから見方によっては「60か月以前で退去した方も、61か月目以降、継続して住む方の家賃分を負担している」といえます。
ちなみに前払金プランと月払いプランを併用しているホームの場合、この想定居住期間でちょうどどちらのプランを選んでもホームへの支払総額が同額になるように設定されていることが多いです。この例の場合、前払金プランでは家賃相当分の負担がなくなる分、61か月目以降は月払いプランの方が支払総額が逆転するということになります。
前払金ゼロ円ホームの「初期費用」
前払金がゼロ円というホームでも、毎月の利用料のほかに別途、初期費用がかかることがあります。「敷金」や「保証金」と言われているような費用です。
重要事項説明書には「敷金・保証金」の有無と、「あり」の場合の金額が記載されています。前項の「前払金」と異なり、この敷金・保証金は入居期間に応じて償却されるものではなく、原状回復に関わる費用を除き、原則退去時に全額返還される性質のものです。「家賃の〇〇か月分」という扱いをしているところが多いですが、老人福祉法施行規則第20条の9には「敷金(家賃の六月分に相当する額を上限とする。)」とありますので、最大半年分の家賃相当額が入居時に必要になることがあります。
家賃相当額が仮に15万円だとすると、半年分で90万円ですから結構な金額です。退去時に戻ってくるとは言え、まとまった費用を用意することが難しい方もおられると思います。前払金ゼロ円ホームを検討される方は、この「敷金・保証金」の有無についてもしっかり確認しましょう。
それでは今回はこのあたりで。次回、「後編」に続きます。