重要事項説明書の「読み方」講座(3) 建物についての説明
さて今回はもう1枚ページをめくり、「2 事業所概要」の項を見ていきましょう。
事業開始年月日と建物の竣工日
有料老人ホームには、有料老人ホームとして設計された新築のものと、企業の社員寮や研修施設などをリフォームした改修のものがあります。少し慣れてくると外観の画像などを見ればおおよその区別はつくのですが、このページのふたつの項目を確認するとどちらのタイプかがわかります。「事業開始年月日」と「建物の竣工日」です。
新築ホームの場合、建物の竣工・引渡しから事業開始までは数か月程度です。居室の家具や厨房機器類などの搬入、オープニングスタッフによる現地での研修などで1~2か月程度の「準備期間」をおくところが多いでしょうか。
一方、改修タイプのホームでは、建物の竣工時は社員寮や研修施設など別の用途で作られ、その建物を使用していた期間がありますから、有料老人ホームとしての事業開始年月日との間には数年~数十年の空き時間があります。
社員寮からの改修といっても、多いのはいわゆるバブル期前後に建てられたものです。1980年代の後半から1990年代初頭までの時期ですね。この当時に建てられたものは、好景気の追い風もあってしっかりとお金をかけて作られた見栄えも良いものが多く、有料老人ホームに改修するのに都合が良かったのです。
またバブルが弾けたことで企業がこぞって福利厚生施設を手放した時期が、介護保険制度が施行された2000年の前後数年に多かったことが、工期を短くコストも抑えて開設したい有料老人ホーム事業者の思惑に合致したという側面もあります。
新築だから良い、改修だからダメとは一概には言えないのですが、見学のときに確認するポイントが違ってきます(過去記事「入居金が高い有料老人ホームの方が安心?! 最終回」をご参照ください)ので注意したいところです。
このほか建物の欄では、居室にトイレや浴室があるかどうか、共同の浴室の場合、大浴槽・個人浴槽(個浴)・機械浴槽のそれぞれの内訳なども確認できます。最近開設されたホームでは何人かで一緒に入浴する「大浴槽」タイプより、1:1でお世話することで安全に、落ち着いて入浴ができる個浴タイプが主流になりつつあります。大切な生活設備ですので見学のときにはぜひ、浴室もご見学ください。
お風呂は日中、お食事の時間を除きフル活動している有料老人ホームも少なくありません。見学の時間を昼食の時間に合わせて設定することで、浴室も見学しやすくなることは過去の記事でもご紹介させていただきました。(「私たちが見学のときに確認していること(8)」)
また共用のエレベータが何基あるかも記載されています。1基の場合は、見学時に食堂が何カ所あるか確認すると良いでしょう。1か所だとすると、食事の際にエレベータが大混雑する可能性があります。
今回はこのあたりで。次回は「3 従業者に関する事項」のページを見ていきます。