有料老人ホームの防災・減災対策
今回は有料老人ホームでの防災・減災対策について考えてみたいと思います。
「消防計画」は設置届に必要な書類
高齢者が暮らすことが前提となっている有料老人ホームでは、開設に先だって行政に提出する有料老人ホーム設置届の添付書類に消防計画や緊急時対応マニュアルが含まれており、現在開設されている有料老人ホームではいずれもこれらの書類が作成されています。
但し計画書やマニュアルがあっても、必ずしもいざというときに適切な対応が取れるわけではありません。
地震などの天災は、今日いまにも起こり得るものです。有料老人ホームへの入居を検討しておられる方はもちろん、いま既にいずれかの有料老人ホームにご入居中の方・ご家族の方もどのような防災・減災対策が取られているのか、ぜひ確認してみてください。
災害が起こったときの対応、役割分担は明確?
いつ起こるかわからないのですから、人員の少ない夜間や早朝の時間に起こることも想定しなくてはなりません。少ない人員で何を優先順位に、また誰が何をするのかなどが明確になっている必要があります。
ベランダからの転落事故を防ぐ目的で居室窓が全開にならないようストッパーを付けているホームがありますが、緊急時にそのままでは避難経路としてベランダを利用できないということになります。認知症の方など、転落の危険がある方の居室にだけストッパーを付けているホームもありますが、その場合はどの居室にストッパーが付いているのかをスタッフ一人一人が把握しているかという問題もありますし、そもそもストッパーの解除方法をすべての職員さんが知っているかという問題もあります。
また停電でエレベータが使用できないケースや非常用電源が何らかの理由で作動しなかったとき…などさまざまな事態を想定した避難訓練を、消防署とも連携しながらどのように行っているかという点も確認すると良いでしょう。
災害が起こってしまったときのための「備え」は?
食料や水などは備蓄庫にどの程度確保されているでしょうか。インフラの遮断によってトイレが使えなくなる事態も想定しておく必要がありますね。
また入居者の中には医療用機器を利用している方もおられます。停電時の非常用の電源確保は、生命にもかかわる事態となりかねません。また警報機器類の定期的な動作確認、点検も有効な備えのひとつです。
「そのとき」のために備える姿勢
より多くの入居者を集め、高いレベルで入居率を安定させることが「最優先して達成すべき課題」となりがちな有料老人ホーム業界では、入居率の向上に直接は作用しない防災・減災対策よりは、優秀な営業マンの雇用や広告出稿など「(うまくいけば)元が取れる」項目にお金を投じようとする傾向があると思います。
自家発電装置や太陽光パネルによる電源の確保、電気自動車の全施設配備など大規模な防災・減災対策を取っている会社もあります。使わずに済めばそれに越したことはないのですが、発生したときに被害を最小限に抑えようとする取り組みは、運営企業としての姿勢を示すものともいえるのではないでしょうか。