「一度見ただけじゃわからない」は本当か
老人ホームの入居相談を承っていると、今回のタイトルでもある「老人ホームは一度見ただけじゃ良いも悪いもわからない」という言葉をよく耳にします。
確かに1回のホーム見学に要する時間は90分から長くても120分程度、一度見ただけじゃわからないという意見もうなづけるものがあります。
今回はそんな状況の中「ではどうすればよいか」を考えていきたいと思います。
早めに動き始めるのが「王道」
一か所のホームについて見学は一回までしかできないという決まりがあるわけではありません。訪問する時間を変えて、曜日を変えて、場合によっては季節を変えて見学に行けばより理解も深まることでしょう。「一回でわからないなら二回三回と見学してみたらどうでしょう」が王道の回答になります。
実際、私たちのご相談案件でもあるAホームを見学された後、別のBホーム、Cホームとご見学されたあとにあらためて最初に見たAホームを再見学されたご相談者様がおられましたが、「最初に見たときとは印象がずいぶん違う」ことにご自身でも驚いておられました。
複数のホームをご覧になられたことでホームを評価するための軸がハッキリしてきたことが要因だと思います。見るべきところ、評価すべきところを定めた上での見学は、やはり理解が深まるものです。
気になったホームは再見学してみるのが一番良いのですが、これも時間的な余裕がないとできません。早めに動き始めることの意味はここにあります。早めに動き始めるのですから、「まだ早い」という結論になるかもしれませんが、そのときはそのとき。将来の備えになったと考えればよいのです。
再見学が難しいなら見学の「質」を上げること
候補ホームを各1回ずつしか見学する時間的な余裕がないということであれば、その一回の見学の「質」を上げるしかありません。
見学の「質」はどうしたら上がるでしょうか。
これは過去のブログ記事でも再三お伝えしてきたことですが「見学を一日一か所ずつとし、各ホームを同じ条件で見ること」が最もお勧めの方法です。
入居先のご検討を進めていくと、立地はおおよそ同じエリアになることが多い(「練馬区及びその近隣区」とか「中央線沿線の高円寺~立川あたりまで」のように)ので、うまくスケジュールを組んで午前中からスタートすれば、夕方までの半日を使って3件~4件くらいのホームは「回れる」と思います。
ただ、この「回れる」が落とし穴になるのです。
一日に複数ホームを見学するデメリット
一日一か所の見学でも疲れますが、移動して館内を見学して同じことを聞かれて…を日に2回も3回もするのはとても骨が折れることです。ですが、それ以上のデメリットが「ホームを同じ条件で見学できないこと」にあります。
(Aホーム)
お昼どきに見学したAホームでは昼食の試食もさせてもらい、昼食どきの入居者の様子、食事に介助が必要な方に対する職員さんの言葉遣いや接遇がひととおり見られ、皆さんが食事を召し上がっていて空いていることの多い共用の浴室も見学ができた。
(Bホーム)
その後の昼下がりに見たBホームでは食事の時間を過ぎており試食はできず、食事を終えた入居者はそれぞれの居室に戻られていて様子も見られず、入居者が居室にいればお世話をする職員もお部屋にいますから職員の動きも見えず、ではせめて共用の浴室でも見学しようとしたら午後の入浴が始まって浴室まわりも見学できない。
…となるとABそれぞれのホームを正しく評価できるでしょうか。複数のホームを比較するときはできるだけ同じ条件で見るのがポイントで、これによって見学の質はグッと上がるのです。
確かに忙しい中、なんとか時間を作ってのホーム見学となると一日でまとめてしまいたいお気持ちはよくわかりますが、見学の質を上げるためには極力避けるべきなのです。
「一日に複数回の見学」を主導してきたのは…
有料老人ホーム、紹介センター、ご相談者の3者のうち、有料老人ホームは「一日一か所」派といえるでしょう。本音をいえば「自分のホームだけを見て決めてほしい」わけですからね。
ご相談者はどうでしょう。仕事や家事に忙しい息子さんや娘さんにとってみれば「一日一か所、見学先が3件あれば3日用意する」のはしんどい…というご家族もおられると思います。
ですが、私たちが「一日一か所ずつの見学をお勧めする理由」を都度ご相談者様にお伝えすると「確かにその通りだ」と忙しい中でお時間の都合をつけて下さる方も少なくありません。
「そう言われるまで一日複数件見学するデメリットに気づかなかった」と仰る方も多いのです。どうしても時間の都合をつけるのが難しいという方に対してはどうにか工夫して一日複数件の見学を組むことももちろんありますが、それでも日に2件までですね。
問題は紹介センターの「立ち位置」です。基本は「一日複数件派」なんですが、理由はおわかりでしょうか。
老人ホーム紹介会社は紹介したご相談案件が成約となったときにホーム運営会社から受領する紹介手数料で成り立っていますが、当然いくつご案内しても手数料がいただけるのは入居成約となった一か所からのみです。3日に分けて4日に分けてホームにお連れしても、手数料は一か所からしかいただけませんから、「一日にまとめてご案内」した方が効率が良いのです。
そうすれば1件のご相談案件はその日一日で「カタが付き」、翌日からは別の案件に取り掛かることができるわけですね。
同じ理由で「見学候補先を3件~4件に絞り込め」というのも話のデドコロは老人ホーム紹介センターではないかとにらんでいます。5件以上見学するとなると、朝から詰め込んでも一日で「回り切れない」=2日以上かかってしまうからですね。
見学の「質」が確保されていれば、見学件数が増えても「混乱」することはありません。
まとめ
老人ホームを見学するのに「一度見ただけじゃわからない」のは確かにその通りだと思います。気になったホームは二度三度足を運んで疑問を解消し、他所ホームとも比較して検討されるのが良いと思います。
そこまで時間の余裕がない方でも「一日一か所」の見学スケジュールを組めるくらいの時間的余裕は持って検討するべきです。3つ見るなら3日、7つ見るなら7日を見学に割くということです。
ウィルホームコンサルプラザは、「明日にでも明後日でも」といった「超お急ぎ」のご相談が得意ではありませんが、一方で「しっかりと腰を据えてホーム入居を今のうちから検討したい」というご相談は過去にもたくさんお受けしてまいりました。
「終の住処」を選んだ決め手が「見学翌日でも入れてくれるホームがココだけだったから」では寂しくありませんか。
丁寧に老人ホーム探しのご相談を、これからも承ってまいりたいと思います。どうぞお気軽にご相談ください。