有料老人ホームと広告(2)
前回の(1)に引き続き、有料老人ホームの広告でよく見られるキャッチコピーについて解説していきたいと思います。
見学随時
「いつでも都合の良いときに見学に来てくださいね」という意味ですね。非常に親切な印象を受けますが、さてどうでしょうか。
見学に行ったときに施設長や入居相談員がお休みだったり、他の見学者の対応中ということもあります。見学随時と広告チラシに記載してあっても、入居相談員と施設長が在勤している日にアポイントを取って見学に行かれることをお勧めします。
多くの有料老人ホームでは入居者のお世話をするスタッフと、入居者を募集するスタッフは原則分業制となっていることもあり「手の空いた職員」の案内では適切な説明が得られないこともありますし、時間帯によっては「手の空いた職員がいない」こともあります。その意味では見学随時という言葉は少し無責任な気もしますね。
空室わずか
「早く決めないと空室が無くなっちゃいますよ」という意味ですね。入居検討者のためを思った親切な言葉と受け取ることもできます…でしょうか。
ただ広告を出稿するのは、情報誌や新聞などに掲載するにしろ、チラシを刷って新聞折込やポスティングなどで配布するにしろ時間とお金がかかります。チラシを刷っている間に、または配布して消費者の手元に届くまでの間に満室になってしまったら広告費が無駄になってしまいますよね。
そもそも「わずか」な空室を埋めるために広告予算を捻出できるかという問題もあります。空室がわずかなら、広告などに頼らず過去の見学者リストを洗いなおしたり、入居相談員に発破をかけて介護事業所や病院などへ訪問させるほうが空室対策としては現実的ではありませんか。
とするとこの「空室わずか」は、「わずかではない」空室があるけれど、「わずか」と消費者を煽って焦らせているのでは?と疑った方が良いかもしれません。
話は少し横道にそれますが、実際はわずかではない空室がありながら入居相談時や広告で「空室わずか」とうたっていたあるホームは、夜に大半の居室に電気が付いていないのはおかしいと、空室の電気を20時過ぎまでわざと付けていたそうです。
即入居可
「入居をお急ぎの方、すぐにでも入れますよ」という意味です。これも急いで入居をお考えの方に手を差し伸べる優しい言葉に思えないこともありませんね。
病院に入院中の方などで、既にその方の医療的な情報が整っている場合は即時の受け入れが可能な場合がありますが、逆に言うと即入居が可能な状況というのは極めて限定的であるとも言えると思います。
介護スタッフ24時間常駐
「介護職員がいない日や時間帯はありません。お正月でも真夜中でも、いつ行っても必ず介護職員は居ますよ」という意味です。
これは介護付有料老人ホームでは義務付けられていますし、職員配置の基準がない住宅型有料老人ホームでも、24時間介護職員を常駐させていないところはまずないでしょう。私自身、見聞きしたことがありません。
当たり前のことが書いてあるなあくらいの意味でしかありません。