入居金が高い有料老人ホームの方が安心?!(2)
前回は、入居金に大きな差が出るひとつの要因として「入居の主対象の違い」を挙げました。
お元気な高齢者と介護を必要とする高齢者とでは、求める居室の広さや間取り、(特に娯楽系の)共用設備、必要とする人員体制と配置などが大きく異なり、それが費用の差となって表れるというお話でした。
ほかにはどのような要因があるでしょうか。
職員体制の手厚さによる違い
同じ要介護高齢者を入居の主対象とするホームでも、入居時費用が大きく異なることがあります。また同じ入居金0円のホームでも、毎月の費用(月額料金)が大きく違うことがあります。ここには職員体制が大きく関わってきます。
介護付有料老人ホームでは、入居者3人(厳密には要支援2以上、要支援1の入居者については10人につき介護・看護職員1名以上)に対し常勤換算で介護・看護職員を1名以上配置する基準が設けられており、「3:1」と表記されます。また看護職員については少なくとも日中、配置することとなっていますが、この人員配置を手厚くすることで費用にもその差が反映されることになります。
例えば基準の倍となる「1.5:1」の職員体制としたり、看護職員を日中だけでなく夜間も含めて24時間体制配置すれば、その分、入居者には手厚いケアを提供することができます。また看護職員の夜間配置により、介護職員では提供することが認められていない医療行為についても医師の指示のもと、24時間体制で提供することができるということになります。特に介護職よりも人件費の高い看護職員を手厚く配置することは、費用に反映されやすく、「看護職員日勤帯のみ常駐」のホームと比べると費用は高額になるといえるでしょう。
複数の介護付有料老人ホームの料金を比較するとき、単に入居金や月額料金といった「料金表に載っている金額」だけを見るのではなく、この職員配置に注目すると差がわかりやすくなるのではないかと思います。
看護職員24時間常駐が意味すること
看護職員が夜間も含めて24時間常駐しているホームには、必然的に「介護職員が提供することができない医療的な処置が、夜勤の時間帯も含めて必要」な入居者の割合が大きくなるということになります。
特段夜間の医療行為は必要としていないけれど、看護職員も24時間体制で配置されているホームの方が安心だという理由で、比較的お元気な高齢者がこのタイプのホームを選ぶと、周りの入居者はベッド上での生活が中心の要介護度が重い方が多く、普段の話し相手が見つからなかったり、ホームで行われるアクティビティやレクリエーションなども重い方に合わせたものになってしまい、退屈…といったことになりかねません。
将来的なご不安から、看護職員24時間常駐のホームをお元気な状態でご検討される場合は、ご自分と同じくらいの身体状況の方がどの程度おられるのか、フロアは身体状況に合わせて分かれているか、館内のアクティビティなどは自分でも楽しんで参加できるものであるかどうかなども確認すると良いでしょう。
居室フロア数にも注目!
前述した「3:1」以上の職員配置基準ですが、居室フロア数は特に考慮されていません。
入居者60人、職員配置3:1の介護付有料老人ホームの場合、常勤換算で20名以上の直接処遇職員(介護職+看護職)が配置されています。これが2階建のホームなら単純計算で1フロアあたり10名となりますが、5階建のホームだと4名ということになります。
一般的に高層の有料老人ホームでは、身体状況によるフロア分けがなされており、重い方の多いフロアに手厚く人員を配置する一方、お元気な方のフロアの配置を薄くすることでバランスを取っているホームが多くなっています。
開設後、数年経過してホーム全体の平均要介護度が上昇したときに同じパフォーマンスを維持することができるかと考えると、高層の有料老人ホームは不安もあることがわかります。
この記事のまとめ
・料金表の金額だけでホームの比較はできません
・職員配置に注目。人件費の高い看護職員の24時間常駐は費用にも反映
・看護職員24時間常駐ホームは、その体制を必要とする方の割合が高くなる点に注意が必要
・居室フロア数と職員配置の関係。高層ホームの注意点