重要事項説明書はホーム選びの強い味方(2)
前回からずいぶん間が空いてしまいましたが、前回に引き続き重要事項説明書のポイントについてまとめてみます。
年齢別・要介護度別・男女別の入居者分布もわかります
入居されるご本人様にとっても、ご家族様にとっても「ほかの入居者とうまく生活できるのか」はホーム選びにあたっての不安要素なのではないかと思います。
個々の既入居者のご性格や、自室の両隣の方がどんな方なのか…など細かい部分については「入ってみなければわからない」かもしれませんが、重要事項説明書には年齢別・要介護度別、男女別の入居者分布表が掲載されています。ここで見えてくるものもあるのですよ。
・入居者の要介護分布が「要介護4,5」に偏っている
看護職を24時間常駐させている「医療に強い」ホームに多いのですが、要支援~要介護1,2あたりの方が少なく介護度の重い方が多いホームでは、ベッドで臥せっておられる時間の長い方や、さまざまな医療的処置を常時必要な方も多くなりがちです。
比較的お元気な状態で入居され、他入居者とのコミュニケーションやレクリエーションなどを楽しみたい…という方がこのようなホームに入居されると、話し相手にも苦労する、せっかく入居したのにストレスばかりがたまる…ということにもなりかねません。
また介護付ホームの場合、入居者3名に対し介護看護職員を常勤換算で1名(=3:1)以上配置することとなっていますが、ホームによっては「2.5:1以上」「2:1以上」「1.5:1以上」と基準より手厚く配置しているホームもあります。
職員配置が手厚ければ、サービスも手厚くなりますが、これも入居者分布が重介護寄りに極端に偏っている場合は割引が必要です。「お手伝いをたくさん必要とされている方が多い」ホームでは、職員の数が多くてもサポートしきれないことも考えなくてはなりません。ましてや基準どおりの「3:1」の職員配置で入居者の要介護度が4,5に偏っているホームでは現場職員の負担がかなり強くなってしまい、事故も起こりやすくなります。当然、そんな職場の離職率は高くなり、スタッフの定着率も安定しません。
・男性の入居者が極端に少ない(男性の入居の場合)
有料老人ホームではたいていどこでも女性の入居者が多くなっています。ひと昔前は「男3割女7割」と言われていましたが、現在は男性が3割もいれば「多いですね」という感じで、男性率は平均的なホームで2割前後というところでしょう。
これがホームによっては1割前後というところもあります。
100人定員のホームなら1割でも10名の男性がいることになりますが、20人定員のホームだと2人です。
2人しか男性がいないとなると、自分が入っても3人、麻雀もできませんね。(3人麻雀というのもありますが)
またその2人が重介護だったり認知症の周辺症状が強めだったり、そうでなくても「一人がお好きで、ほとんど自室で過ごす」方だとすると、麻雀どころか囲碁や将棋、トランプ遊びなどもできません。
見学のときには「自分と同じくらいの身体状況/年齢」の方がどれくらいいらっしゃるか確認すると良いですし、男性の方については、既入居者の男性のホームでの「過ごし方」や身体状況についても聞いてみると良いでしょう。
加えて、ウィルホームコンサルプラザが推奨している「昼食の時間に合わせたホーム見学」をすれば、「ホームの全体像」がわかります。男性の入居者数も、車いすの入居者数も、食事に介助が必要な方の入居者数も、自分と同じくらいの身体状況の入居者数もひと目でわかります。
過去一年の退去者数とその理由からわかること
重要事項説明書には、退去者数もわかります。具体的には過去一年の退去者数と、その理由について記載されています。
退去理由で最も多いのは「死亡」によるもので、次に「医療機関への入院」です。「他の有料老人ホームへ転居」や中には「ご自宅に戻られた」という例もあります。
これら様々な理由で過去一年間に退去された方の人数が例えば25人おられたとすると、「昨年は平均すると月に2室は空きが出ていた」ということになり、現在満室で待機者が10名おられる場合は、「順番が回ってくるまでに5か月くらいは見ておく必要があるな」と、これは一概にはいえませんが、一つの目安にはなるのではないかと思います。
また退去理由の「他の有料老人ホームに転居」欄は一見、「ホームのサービスに不満があって他社ホームに移った」ケースを想定しがちですが、看護師の職員配置が日勤帯(9時~18時)ホームで「夜間帯にも看護師が必要な身体状況となられた」ことで看護師が24時間常駐しているホームに転居せざるを得なかったケースが多いです。
この場合の他の有料老人ホームというのは、同じ会社の系列ホームも含まれます。
「特別養護老人ホーム(特養)への転居」欄の数字は、入居時の前払金が0円というホームでは多くなります。満室の特養に入居申し込みを入れて待機の列に並んでいるという方は、順番がいつ回ってくるかわからないので、入居時にまとまったお金を入れる「前払金方式」ではなく、毎月の支払いで精算する「月払い方式」を選ぶ方が多いためです。
老人ホームの居室が空くのはご逝去に伴うものだけでなく、これら様々な理由によるものも結構あるのです。
以上、2回にわたり「重要事項説明書はホーム選びの強い味方」をお伝えいたしました。
老人ホームに資料を請求する前に、また老人ホームを見学する前に、ご自宅でできるホーム選びの下準備として、この重要事項説明書をしっかり読みこなす大切さがおわかりいただけましたでしょうか。
ウィルホームコンサルプラザでもご相談者様との面談の際に、ホームのパンフレットと合わせてこの重要事項説明書も持参することがよくあります。専門的な用語も並ぶ、細かい文字だらけの文書は確かにとっつきやすいとは言えませんが、ホーム選びには欠かせない書類です。「読める」ようになっておいて損はありませんよ♪